社長の仕事である「経営」とは何かを、分かりやすく定義してみる

経営とは「調達と運用を最適化し、利益を極大化し、事業規模に見合う現金を持つこと」と、僕は定義しています。

この定義は、日々、中小企業支援を実践する中で、共に理念財務経営を学んでいる方々との会話や発信を元に、自分自身でブラッシュアップしたものです。

僕の場合は仕事を通して財務経営という理念を共有した上で、それぞれの経営者の皆様が抱えている課題解決を通して、中小企業支援をさせて頂いてる訳ですが、大事なのは原理原則ですので、定義をしっかりして進める必要があると実感しております。

なぜなら、判断に迷ったときに、羅針盤となる原理原則がなければ、経営判断そのものが出来ないからなのです。

経営とは何か、というのは哲学的な問いかけなのだと思います。

人には誰しも欲望がありますので、儲けたいと思いますし、損したくないし、出来れば得をしたいですし、できれば楽をしたいし、と、キリがなく、これはその通りなのだと僕も思います。

 

でもですよ、社会的動物である人は一人では生きれず、人々が様々に細分化知れた価値提供をすることで、社会への貢献価値の対価として報酬を受け取っているし、提供価値を交換することで、自分が出来ないことを他人にやってもらう事で社会を維持しているのですから、利己的な考えや行動では他人との関係性の維持が困難になります。

その様な私利私欲で経営を行ったとしても、ステークホルダーの誰も共感もしないでしょうし、応援や支援などがあるとは思えません。

また、従業員さんも雇用契約などで繋がっているとしても、それは契約の範囲内になってしまうのではないでしょうか?

 

僕自身も金融機関勤務とはいえ完全歩合給(フルコミッション)の会社員なので、ある意味一人経営者ですから、経営とは何かを意識しないといけないのに、分かっていなかった時期があります。

特に駆け出しの頃は、物事の原理原則の大切さがわからず、儲けや成功といった結果が目的となり、結果、付き合う方々も損得勘定が判断基準になったり、バーターや華美華燭の不健全な関係性が多くあったように記憶しています。

だからこそ、自分自身も不必要なブランド品を身に着けたり、過剰な金銭消費といった事をしても疑問にも思わず、本当にクズな生き方をしてきたものだと、今振り返れば恥じ入るばかりです。が、当時は気付くことができませんでした。

当時の僕は、節税や損得を中心としたスキームを考案し、トークを磨き、面談の接点を増やすことで、数多くの経営者の方々に自己の商材を売りに売った訳ですが、後から思い知る事になります。

 

ある時、駆け出しの頃に私を信じて任せて頂いた経営者のお客様から「加入した生命保険は大事だと思うので、解約するつもりはないのだけれど、資金繰りが厳しいから、契約者貸付制度を使ってお金を借りたい」という申し出でした。

本末転倒なお話ですし、いかに僕がお客様に甘え、負担を掛けていたのか、という証拠を突き付けられた瞬間でした。

 

この、金融商品の財務への影響による資金繰りに生じるギャップとの意味の分からなさが、私を「財務とはなにか、経営とは何か」という今でもその真理を求めて止まない探求に導くことになりました。

この探求のモチベーションは、上記の「贖罪と反省」から始まりました。だからこそ、今、後輩ちゃんたちに学びと実践の場を提供しているのは、当時の僕の様な事を、経営者の皆さんに行って貰いたくないからなのです。

 

物事の原理原則に沿わない形で販売された金融商品は、結果的に買って頂いた経営者の会社の財務へ大きな影響を与え、場合によっては財務を棄損し、経営における最大の目的である「継続性」への悪影響を及ぼしかねません。

だからこそ、経営とは何か、という原理原則を定義し、理解し、血肉化し、日々の学びと実践を通して、自らを律していく必要があるのだと、つくづく思うのです。

 

さて「調達と運用を最適化し、利益を極大化し、事業規模に見合う現金を持つこと」という定義について、ちょっとだけ解説をさせて頂ければと思います。

まずは、「調達と運用」とは何かというと、財務諸表の最も最初に表記されるもの、そう「貸借対照表(BS)」の事です。これを最適化する、という事から始まります。

そして、この未来のBSをデザインし、毎期、毎月、毎日挑戦をすることこそが、事業計画(経営計画)となります。

目指すべきは未来のBSなのです。そして、そのBSを作るために損益計算書(PL)があり、この未来のPLを計画して実施する事こそが経営そのものであり、PLとは、目的ではなく手段だということを、理解されている経営者の方々が少ないのも現実です。

 

さて、BSが表しているのは、会計年度終了時点での会社の財務状況を表しているのですが、俯瞰してみると、向かって右側に表記されているのが会社のお金がどこから来たのか(調達)、そして左側にそのお金がどのような状態になっているのか(運用)を表していることに気付くはずです。

そう、BSとはバランスシート、つまり、左右は対象です。

そして、右側のお金がどこから来たのか(調達)ですが、負債の部と純資産の部に分かれますが、言い換えれば、負債の部とは他人のお金(返さなければならないお金)と、純資産の部とは自分のお金(返さなくてもいいお金)と読み解くことができます。

その調達されたお金を使って、資産の部(運用)にて、棚卸資産(商品)や、製造業であれば固定資産(機械や装置など)に変えて、これらを使って、売上に変える訳です。

 

さて、イメージしてください。

まずは、調達ですが、返す必要があるお金と、返さなくてもよいお金、どちらの方が使い勝手が良いですか?

返さなくてもいいお金、ですよね。これは自分のお金、純資産の部の事ですので、これを自己資本といい、自己資本比率とは、調達されたお金の内、返さなくてもよいお金の比率です。そう考えると、自己資本比率が高い会社の方が、信用が高いって、当たり前ですよね!

 

そして、調達と運用の最適化で、最も大事なのは、返すか返さないかは関係なく、調達してきたお金を何の資産に変える(運用)のか?という視点です。

調達された資金を使って、運用した結果としての資産保有の目的は「売上・利益に貢献するもの」この一言で定義できます。

だから、保有している資産に、リゾート会員権やゴルフ会員権、友人の会社に貸したお金である投資有価証券、経営者自身が借りた役員借入金・立替金・仮払金、別荘や社宅、高級外車や船舶って、売上利益に貢献しますかね?

こういった資産についての指摘をした場合、経営者の皆様からは言い訳をいっぱい聞きますがw

でもね、それらの資産を取得した資金は、どこから調達された資金なのですか?と聞くと、概ね言葉が濁ります。そう、自己資本で調達されたお金ではないことがほとんどだからです。

 

何故なのでしょうか?

自己資本で調達されたお金とは、税金を支払った後に残った「当期純利益」です。

税金をしっかり払った後の返済する必要のない大事なお金を売上利益に貢献しない資産に使うなど、しっかりと利益を出し、しっかりと税金を支払ったことのある経営者であればする訳がないのです。

利益を出すのも簡単ではなく、納税するのも簡単ではありません。

いろんなステークホルダーの共感や協力があって初めて成し遂げられる大切な資金なのです。

だから、売上・利益に関係ないものなどに、使うことはできないのです。

そう、節税意識や、損得勘定や、借入金は未来の利益で返す必要のあるお金であることを理解していないから、売上・利益に貢献しないにも関わらず、間違った経営判断をするのです。

 

そして最後に、現預金とは何かをお話しします。

現預金とは、売上・利益に貢献する資産として「運用」されていない資金、と考えることができませんか?

そして、この現預金は、自己資本で調達された資金なのか、他人資本で調達された資金なのかで、手元に現預金があるから大丈夫、などと単純に考える事が出来ないことに気が付かれませんか?

自己資本比率がとても高くて現預金が豊富にあるのと、自己資本比率が低いのに現預金が手元に豊富にある、と言われると、後者の場合は、それって不味いですよね、とお気づきになられると思うのです。

 

さて、調達と運用を最適化し「利益を極大化する」訳ですが、これは財務諸表の2枚目である損益計算書(PL)の話である、という事に気付かれますよね。

調達と運用であるBSをつかって、売上に変換する訳ですが、PLでの売上も分解することが出来ます。

ちなみに、このBSからPLでの売上への変換率を総資本回転率といい、イメージとしては売上・利益に貢献するBSをぐるぐる回して売り上げを作り出すイメージです。

棚卸資産(在庫、商品)をイメージしてもらうと分かりやすいですよね。モノがなければ、売上にならないですからね。

 

そうして生み出された、売上とは、他人他社の価値である原価(変動費)と、分自社の価値である粗利(売上総利益)に分けられます。

そして、自分自社の価値である粗利から固定費を差し引いた残りが「利益」となります。

さて、固定費とは費用の事ですが、費用使用の目的は何でしょうか?実はこれも「売上・利益に貢献するもの」この一言で定義できます。

そう考えると、交際費って本当に使用目的があっていますかね?という話になります。僕なんかは、この事を理解してから、本当に生活が変わりました。そして、本当に自分自身の価値を高めるために、交際費ではなく教育研修費に使うようになりました。

結果は、売上・利益に貢献してくれましたので、皆様にもおすすめしたいと思います。

 

さて、この利益から税金が控除され、残った最終的な利益(当期純利益)が、BSの繰越利益剰余金として、自己資本に繰り入れられ、返さなくても良い資金が調達できることになります。

 

また、この返さなくても良い資金で支払わねばならないものがある事を、ご存じでしょうか?

それは、返さなくてはいけないお金、そう借入金の返済です。

 

他人資本として金融機関からの借入金があれば、毎月返済がある訳ですが、この借入金の元本返済分は、現預金で返す必要がありますよね。

毎月、100万円の元本返済が必要であれば、年間1200万円。このお金はどこから支払いますか?

現預金以外の資産では、金融機関は受け取ってはくれませんよねw

ですから、運用に回っていない現預金、それは、自己資本調達で準備されたお金がなければ、さらに他人資本調達を行って、借入金を増やすしかないことに気付きませんか?

確かに、新たに借入金が増やせればいいのですが、金融機関はずっと貸し続けてくれるのでしょうか?

もし貸してくれなくなり、自己資本での現預金の調達が出来なければ、その時はどうなりますか?

会社はお金を支払う事ができなくなると、倒産するのです。倒産すると全てのステークホルダーに迷惑を掛けます。結果、周りに多大な迷惑を掛ける訳ですので、社会的に終わってしまうのです。

 

つまり、利益を圧縮する、節税する、売上・利益に貢献しない資産を取得する、売上・利益に貢献しない経費を使う、などの行為は、経営者自らご自身の首を絞める行為であり、ステークホルダーへの背任である事が理解できれば、もっと日本経済は良くなると思うのですが、いかがでしょうか?

381万社あるといわれている現在においても、なぜ、約7割が赤字申告なのでしょうか?様々な理由で赤字になっている事は理解が出来ますが、実際に財務内容を拝見するとおかしなことに気付くのです。

また、黒字の会社であっても、なぜが現預金が残っていません。というか資金繰りはタイトだったりします。これは何を意味しているのでしょうか?

 

私自身、確定申告をしていますので納税は少なくしたいのですが、原理原則を理解して、過度な納税意識を捨てて、しっかり納税してみると気づいいたことがあります。

当初は予定納税などが大きくなり、結構、しんどかったのですが、出すべき利益が明確になり、使うべきものが変わり、結果、納税をしっかりするほどに現預金が残るようになってきたのです。

自分を大きく見せるための資産取得や費用消費はなくなり、どちらかというと無形資産として残るものを意識する様になり、結果、そんなに欲しいものも、使うもののないことに気付くことができたのです。

返す必要のないお金、これが現預金の形できちんと残るようになると、経営者の皆さんの行動も変わり始めます。

労働分配率を気にせずに、従業員さんを含めステークホルダーへ分配する事が出来る様になりますので、意識だけではなく行動でも「利他の精神」を発揮することが出来ます。

人は皆、まずは自身が満たされないと、他人に優しくはなれない、これもまた人の性なのではないでしょうか?

現預金というのは、少ないと資金繰りが厳しくなるますよね。でも、多すぎるというのも、しっかりと事業としての運用に回っていないか、分配が適切でないか、未来費用として投資していないか、という視点もあるということを知って頂きたいのです。

 

経営とは「調達と運用を最適化し、利益を極大化し、事業規模に見合う現金を持つこと」という原理原則を意識して、実際の経営における行動を伴うことが出来れば、迷ったり悩んだりする事が減るのではと思います。

実践した結果は、間違いなく皆さんに安心と安寧をもたらしてくれるからです。

僕と同じ生命保険募集人の皆さんも、一人経営者ですから、同じ様に我が事として実践して頂ければ、本当に人生が豊かになると思いますよ。

 

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木﨑 利長

木﨑 利長

ざっきー
1968年名古屋市生まれ。金融機関に勤務。クライアントの事業価値を向上させる事を目的とし、仕事を通して取り組んでいます。
化学メーカーの住宅部門に約9年。1999年2月生命保険会社に、ライフプランナーとして参画。
具体的には、上場企業を含む約80社の親密取引先のご縁を中心に、生命保険契約をお預かりしており、財務や資金繰りといった経営課題ついての改善や、売上を伸ばすための営業研修など、お客様の事業価値を向上させるための具体的なソリューションを提供し、経営者の弱音をも受け止められる担当者を目指し日々精進中です。
 (※このブログでの意見は全て個人の意見であり所属する団体の意見を代表するものではありません。)

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