1ヶ月ほど前に、7−9月期のGDP速報値が出ましたが、個人消費はマイナスで、何と、外需がプラスで引っ張ってるという結果が出てまして、新聞やTVの報道で「日本経済おわた」だの「アベノミクス崩壊」など、解説されてましたが、外需のプラスは別にして、ずーっとここ数年の数字はこんなもんです。
まあ、近視眼的な視点で見ているから、ちょっと悪い統計データが出ると煽り立ててくる、新聞とかTVとかって、もう怒りを通し越して悲しい感じ…
例えば、GDP速報値ってのは「前期比較」なんだから、4−6月期がかなり良かったから、ぶり返しが起きるのは当然!
だから、もっと大きなトレンドで、ずっと追っていないの駄目なんだけど、今時の経済記者さんって、そんなことも知らないのか?それともわかっていてやってるのか?
マジで微妙なところです。
さて、この数字において注視すべきなのは「7−9月期GDPでは、デフレーターがしっかりプラスに転じている」という事です。
3年ぐらいまでには、名目GDPが実質GDPを下回る(!)という「名実逆転現象」さえあったのに、ここ3年は、この逆転現象も完全に解消され、その上でデフレーターもプラスなのですから、物価上昇2%は無理なものの、デフレそのものは脱却したと言っていいんじゃないのかな?とも思うんです。
確かに、銀座なんかで、わちゃわちゃやってると、ここ1〜2年で、明らかに「企業業績」という視点でのの景気は、良くなっていると、肌で感じる事もあるからです。
でもね、本当に、本当の景気はいいのかって言われると、僕も、うーん、ってなるんです。
ということで、僕の思考を、まとめて見ましたので、読んで見てくださいね。
目次
- 長いまえがき
- 数字は嘘ではありませんが、どう読むかが大切です
- 消費者物価指数の中身も、この際、確認してみよう
- 数字から読み解く、今後の流れ
僕はざっきー、経営者専門の保険屋さん。
大好きな方を顧客にするというスタンスですから、基本は、私に既にお任せ頂いている方を中心に、面談などを通して、仕事をしております。
また、その方々からのご紹介をいただいた方に対しても、手弁当にて関与させて頂いている形で、様々な業種、お立場、お悩み事を共有することで、僕自身の経験も深めさせて頂いております。
では、何をもって仕事としているのかというと、ざっくり言えば、経営者の皆さんの「経営ビジョン」を共有した上で、そのビジョンを達成すべく、様々な貢献しながら、あわせて、経営者の皆様を取り巻くリスク(不確実性)からお守りすること、それを仕事と定義すれば、自ずと業としての保険契約をお任せいただくことになります。
あらゆる仕事の究極の目的とは「顧客のお悩み事を解決すること」ですからね。
このブログは、そんな僕が大好きな方々に、少しでもタイムリーに情報提供をさせて頂きたく思って書いておりますし、経営者の皆様にとっては、頭の片隅に置いておいていただくと、なんらかのヒントになるかもしれないことを、発信しているつもりです。
数字は嘘ではありませんが、数字をどう読むかが大事です
で、表題なんですけど、現在の日本経済の本当の姿って、どう思われますか?
これは、マクロ経済の視点になっちゃうかもしれないんですけど、言い換えれば、今後の日本経済に「あなたは、あなたの未来と資産を賭けることができますか?」ってことです。
僕自身は、ドメドメの業種ですから(笑)そりゃ成長して欲しいいんですけど、僕自身の資産の半分以上は日本経済にリンクしておりません、、、
まあ、国賊ですね、すみませぬ(ぺこり)
でもね、金融機関で、真っ当に仕事をしていて、真っ当なリテラシーがある僕の友人知人は、間違いなく、日本円建ての資産を、できれば50%以下にしようとしています。
株とか債券という運用先の話じゃなくて、通貨のレベルの話でです。
とは言え、僕自身も、まだしばらくは、ビジネスの最前線で仕事ができるなら、仕事はするつもりなので、やっぱり気になるわけですよ。
日本という社会も好きだし、そこで暮らされている大好きな方々も、たくさんいらっしゃるわけですからね。
なので、ちょっと現状はどうなんだ、というところから「ファクト」に基づいて考えてみようと思うんです。
まず、企業業績はめっちゃいいです。
上場企業の7割が黒字で、最高益を出しているところも多いのです。
ファクトは上場企業約3700社の有価証券報告書です。これに書いてあります。
抜粋したものを、四季報という形で編集し直されていますので、ご存知の方も多いと思います。
そして、失業率も低いです。
そうですよね、新卒市場は久々の売り手市場ですし、労働市場全体が、正規、非正規の問題はあるにせよ、売り手市場で、人が足りなんですから。
さらに、経済の先行指標である株価水準も高くて、金融政策の要である日銀は、ジャバジャバ金融緩和をしていますよね。
でもね、物価は、ジワとっとしか上がっていないんです。
そして、物価がジワっと上がったとしても、本当に消費されているのか?
という視点です。
金融政策の最高責任者である、日銀の黒田総裁も、まあ、FRBのイエレン議長も、ECBのドラギ総裁も、いろんな言い方をしてるものの「謎」だと(笑)
日本だけじゃなく、世界レベルの話でね、金融緩和政策の感応度の限界が、以前から囁かれているわけです。
でもね、たまにだけど、ライフプランニングをして、ミクロレベルの家計に接している僕は、ちょっと気づいていることがあるんです。
それはね、本当の問題点は、人々の「給料」が上がらないからなんじゃないのかな?ってことです。
ちょっと、細かい話をしますけど、ついて来てくださいね。
消費者物価指数の中身も、この際、確認してみよう
ぞくにいう「景気」ってのは、消費者物価指数で判断する側面があるんですけど、消費者物価指数ってのは、指数に採用される品目と、そのウエイトってのは、実際のデータとなる各世帯の「家計簿の中身」から決められるんですよ。
例えばね、食べものってのは、実に25%以上のウエイトを占めちゃうんですけど、食べ物って、富む人も、貧しい人も、等しく使う項目なんですよね(金額の大小ではなく、ということね)で、これが25%とかあって、逆に富む人が使うような、宝飾品とかのウエイトは小さいんです。
でね、食べものも、細かく見ていくと、外食のウエイトは何と5%(25%のうち、5%って、五分の一だけど、こんな指数の取り方でいいんかなって思いますがな)と、こちらもウエイトが少なくて、、、
つまり、最も消費の世界で価格競争が進んで、しかも、多少悪くても、安ければよかろうとされる食料品、一般消費財という分野のウエイトが高くなっていることに気がつきませんか?
この消費者物価指数に影響を及ぼすものが歪でいる、ということと、僕も仕事を通して感じる通り、一般の年収の中央値というのは、2000年以降はずーっと下落傾向なんです、、、
で、あまり知られていないのかもしれませんが、あのリーマンショック(ワールドファイナンシャルクライシス)の後のどん底すら、まだ超えていないのです。
まずは、こちらをご覧ください。NHKの記事です、とてもわかりやすいグラフも載っているので見てください。
https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2017_0925.html
つまり、中央値の年収の方々の消費をイメージすると、その方々が使う品目の価格というのは、年収が減っているわけですから、財布の紐をしばり、安くてそこそこのものを選ばざるを得ないわけなので、そりゃあ、消費者物価指数が上がるわけがないんです!
これ、つまりは「格差」の進行が顕著に進んでいる証左なんじゃないのかな?って僕は思うんですよね。
経営者の皆さんに認識して頂きたいのは、日本経済の大部分を支える消費、それを支えてる年収の中央値が下がっている、つまりは、一番統計上影響を及ぼしやすい母集団で、年収は横ばいではなく、下がっている!という現実です。
さらに、ファクトを提示して見ます。
政府統計の総合窓口「e-Stat」にある、家計調査>家計収支>ニ人以上の世帯
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/OtherList.do?bid=000001024945&cycode=1
この毎月のデータを並べていくと、見えてくるものがあります。
数字というのは、時系列で並べると、ある時、不意に全体像を掴めたりしますから、おすすめです。
(余談ですが、決算書や、月次試算表は、必ず数期を並べるといいですよ、できればご自身の手作業で。すると気づくことがあったりしますから)
さて、独身者を除く世帯の消費支出がどうなっているか、という数字を追いかけていくと、見えてくるものがあります。
短期で見るんじゃなくて、長期のトレンドで見てね、どうしても季節要因てのがあるんだけど、長期見ると、はっきり傾向が出てきますからね。
そして、覚えておいて頂きたい数字があります。
それは、2011年3月の「293,181円」です。
そう、この数字は、東日本大震災があった月で、東京を含む東京以北から、商品が棚から完全に消えたあの時の数字です。
ガソリンも買えませんでしたし、つまり、買いたくても買えなかったわけで、しかも、首都圏を巻き込んでいた点からすれば、本当のどん底の消費量と考えて良いと思います。
これをベンチマークにするのです。
そして、これが現在どうなっているか?というと、
最新の今年8月の数字は、なんと「280,320円」ですよ!
買いたくても、物そのものがなかった震災月を、1万円以上、家計の消費支出が下回っている、という現実があるのです。
物価云々の前に「購買力そのものが上がっていない」と説明するしかありません。
そして、驚くべきことに、その震災月以降上回った月と言うのが、それ以降の全77か月中、なんと「19か月」しかないのです、、、
それも並べてみると、
(注意)黄色くマークした、2014年3月といえば、消費税が5%から8%に上がる前の駆け込み需要です
つまり、そういう特殊事情のある「イベント月」だけが、ようやく震災月の消費支出を上回っているだけで、あとはずっとマイナスなんです!
これで景気回復の実感がある、という方がおかしい話ではありませんか?
数字から読み解くファクトは、大多数の結婚している家庭は、子育て家庭を含めて家計は火の車というのが実情だ、という明確な傾向が炙り出されます。
そして、消費税駆け込みがあった2014年は特殊としても、震災月を消費支出が超えているのは、人事異動や新学期などで、引っ越し代や様々な経費がかかる3、4月と年末商戦(お正月)の12月のみ!!!
そして「イベント月」を除いて唯一ランクインしている特殊月が2014年1月です。
さて、次の数字です。1月で並べますね。
2012年12月、第二次安倍内閣の発足とともに、異次元の金融緩和が行われました。
また2013年9月には、2020年東京オリンピックが決定します。
そして2014年4月の消費税増税。
つまり2013年は消費者心理が「空前絶後の」バブルを起こしていた時期といっても過言ではありません。
その流れを受けたのが2014年1月の数値。
しかしながら「空前絶後の」バブル心理を頂点にして、2015年、2016年、2017年と1月の消費支出は低下傾向です。
ですよね、この点から見ても、消費者が財布の紐を締め始めている傾向が、見て取れると思いますが、いかがでしょうか?
これだけ明確なデータがあるのですが、このデータを使って、新聞や、TVで報道されたことを、僕は一度も拝見したことがありません。
ちょっと前の、死語になりそうなんですが、「トリクルダウン」つまり大企業が稼げば、滴り落ちるように利益が国民に行きわたる、と言ってたリフレ派の皆さま、どこに行かれましたか?
最近、お見かけしませんね?リアルな世界でも、バーチャルなSNSの世界でも、、、
まあ「トリクルダウン」は起きるから大丈夫、などということを言っておった経済評論家や政治家の皆さま、頭丸めるか、公的な場所での発言を訂正してください。
間違いを認めることも、僕は大事なことだと思うんですけどね。
数字から読み解いた、今後の流れ
以上、数字を追ってくるとわかりますが、大きく消費にダメージを与えているのは「消費税の増税」ですよね。
そして、消費税の増税ってのは、そのそも「税と社会保障の一体改革」(みなさん覚えていますよね)という話で、民主党政権時代に財務省が持ち出してきた話であって、社会保障費に、増税分の財源を当てるはずだったのに、財政収支改善に消費税を使う、なんて話に、いつの間にかすり変わっているのです!
最近のメディアの発信は「再来年に予定されている消費税増税は、財政赤字を解消させるために必要」という論調になってしまっているのですが、まあ、自分たちは軽減税率を割り当てられるから、と勘ぐりたくもなるわけで、メディアの衰退はここまで来たのか思えるぐらい、もう、悲しい状況になっております。
「あなたのためですよ、と金をかすめ取って、他の目的に使っちゃう」と言う意味に捉えたら、これは詐欺であって、それを助長しているのが、日本の大手メディアなんじゃないのかなって。
だって、第四の権力とか、社会の木鐸と言うのなら、こうゆうことを報道することが、その依って立つ存在意義なんじゃないんですかね。
だから、自分でデータを取って行かないと、バイアスのかかった情報や、間違った認識になってしまう、これが経営者にとっては一番まずいことだと思います。
この先、大きな流れとしては、2020年東京オリンピック前に、消費税増税はありますし、現時点では、年収の中央値は下がり、消費者物価指数は、下がっています。
確かに、ヤマト運輸さんの値上げのタイミングで、価格改定をされたりしたお話も伺いますが、反対に、円安トレンドですから、輸入材は高くなっており、エネルギーや原材料費は緩やかに上がっていて、実際の収益は思ったよりも改善していない、というお話もお聞きします。
大事なのは、現在の正しく捉えた経済環境に置いて、みなさんの会社は、どうなのでしょう?ということです。
僕のお客様でも、借入金の調達コストも安いし、収益率の高い事業に集中しているので、確かに業績はいい。でも、そのようにして得た内部留保を、新たな事業に回そうにも、人がいないし、思い切って賞与や、給与自体もアップしてるんだけど、なかなか人が採用できない、そんなお話を伺います。
また、全体的に、消費が下がってきている現状と、将来的には人口が減少する未来を考えた場合、現時点までの利益を使って、新たな挑戦をされている方々もいらっしゃいます。
今は抜群の収益性を誇っている企業が、将来を見据えて「ヘルスケア(医療、介護、障害、健康維持)」の世界に挑戦されたり、今までは、広告代理店的なソフトの仕事をされていたのに「ハンドメイド(多品種少量生産、ブランディング、付加価値)」の製造業というハードに参入されたりと、本業の業態すら捨てて、生き残りをかけた挑戦をされているお話も伺います。
そんな方々との話の中で、僕がここで書いている「数字」から読み解く今後の流れについては、ほぼ同意いただくし、やっぱりそうなんだ、と、経営者のみなさんが感性としてお持ちである肌感覚でも、同様に感じられていたと、そのことの証明にもなっているようです。
未来を予想するなんてことは、なかなか難しんだけど、未来は現在の延長線上にあるとしたら、現時点の流れというか、トレンドというか、そうゆうものも考慮しながら、やっぱり変化していくことだと思うんですよね。
今はまだ、消費税増税前だし、2020東京オリンピック前なんだけど、そう考えるとその先どうなるのか、これを仮説を立てて調整することができる人って、経営者の皆さんしかいないと思うんです。
そして、人については、これ以上の中央値の低下は、消費そのものを減退させるので、人に依存しない業態にするか、人件費にコストを掛けていく経営体質にするのか、そうゆう視点がとても大事なような気がしています。
だって、実際に、現時点で相当利益を出されている企業は結構ありますし、そういった会社のお話を伺っていると、賞与とか6ヶ月を軽く超えるし、給与水準も高いものがあります。
本当に業績の良い会社は、人前で決しておっしゃらないし、アピールされませんから、景気の話っていうのは、わかりにくいところがあるのですが、数字を見ている金融機関は、すぐにわかります、そして、そうゆう方々が、危機感を持っていることも。
まあ、それぐらい有用な人材確保は、既に、相当な水準で争われているのかも知れません、ある意味、格差がどんどん広がっているのかも?とも思います。
「流れ」や「トレンド」というのは、個人で抗うには無理があります、どんな状況であれ、その大きな流れの中でも、日々の生活が続きますし、挑戦もあるし、チャンスもあるんだと、僕は思います。だからこそ「流れ」や「トレンド」を正確につかむ、この1つの方法が、数字を時系列で、大きく捉えることだと、僕は思うんです。
木﨑 利長
化学メーカーの住宅部門に約9年。1999年2月生命保険会社に、ライフプランナーとして参画。
具体的には、上場企業を含む約80社の親密取引先のご縁を中心に、生命保険契約をお預かりしており、財務や資金繰りといった経営課題ついての改善や、売上を伸ばすための営業研修など、お客様の事業価値を向上させるための具体的なソリューションを提供し、経営者の弱音をも受け止められる担当者を目指し日々精進中です。
(※このブログでの意見は全て個人の意見であり所属する団体の意見を代表するものではありません。)
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