「日銀の出口政策」はどうなるのか、真剣に考えてみたよ!

さて「日銀の出口戦略について、ざっきーはどう思うの?」と聞かれる事が、たまにありましてね。

個人的にお答えしているのは「過去にやったことがないから、何が起きるのかわかりませんよ」です(笑)

というか、それ以上でもそれ以下でもなく、いくら論理的に考えても、過去の経験がないものは、出たとこ勝負になる事が多く、考えても仕方がないよね~と思っておりました。

でもね、そうはいっても、リスク(不確実性)から、僕の大好きな経営者の皆様をお守りしたい訳ですから、いろんなシナリオを考えてみる事で、全体像や、リスクの概要がぼんやりとでもわかればいいのかな、と思いましてちょっとまとめてみました。

時間はかかったけど、シナリオとしては、そのどれかだよね、という感じにはなりましたので、読んでみてね。

 

 

2017年9月7日から8日にかけては、米ドル/円が、1円以上の値幅で動くし、米国と北朝鮮の関係は緊張している背景もある、市場はジェットコースターのような状況でした。

僕は、運用してるわけじゃないし、エコノミストでもないけど、金融機関の端くれだから、今起きていることの背景と仕組み、そして「自分で考えた見解」ぐらいは考えておこうと思っているんです。

何故って、保険屋さんだから(笑)

 

リスク(不確実性)から、クライアントを守りたいんだから、それぐらいやってないとね、というのは建前で、、、

本当はね、単純に知りたいの、僕自身が(笑)

 

仮説や予想が、全て必要とは思っていませんが、こっそり「これは、こうなんじゃないですかね」と、クライアントさんと話しをしていて、それが当たるのが、好き〜

好きなんだから、仕方がありませぬ(笑)

だから、ブログでは、こうしたほうがいいという方法論は書きません(笑)

そんな、保険屋のポジショントークを、誰も聴きたくはないですよね♪

 

それと、どこまでいっても人生は、選択の連続ですから、ある1つの意見として、頭の片隅に置いて頂いたり、ご自身で考える時の、標識になればいいな、って思っています。

マクロ経済といっても、不確実性が高まれば、予想外の動きになるし、そもそも、明日を元気に生きられるかどうかは、誰にもわかりませんからね!

 

さて、黒田総裁になってからの「日銀の緩和政策の出口」というものをイメージした時に、どう捉えたらいいのかを書いてみました。

ちょうどECBも出口政策に入るということで、国際的な金融政策のトレンドの中では、日銀だけが取り残されている状況です。

 

さて、となると日銀の超緩和政策の(1)出口はどのようなものか、(2)出口はいつか、(3)出口でどうなるのか、という、この3点の視点で考えてみる事が分かりやすいのかなって思います。

 

1、出口はどのようなものか

 

現在の日銀の金融政策は「長短金利操作付き的・的金融緩和政策」と呼ばれています。

このブログ書くためにググったよ(笑)

 

とても長いネーミングなんですけど、要するに、

①国債を沢山買って日銀のバランスシートを膨らます(

②ETFやJ-REITのように、国債に比べリスクが大きい資産を買う(

③短期金利をマイナス0.1%に、10年物金利を0%近傍にコントロールする(金利)の組み合わせです。

出口とは、極論すれば、この3つの「異例な政策」を止めることを意味します。

 

ところで、シナリオというものを考える場合、今回のケースは、量、質、金利の3つの要素がありますから、まず、どの順番で出口政策を行うかという問題があります。

既に出口政策を始めた米国の場合は、量と金利の二本立ての緩和政策でしたよね。

 

つまり、

「国債購入量を少し減らして、FRBのバランシート拡大ペースを鈍くする(Taperingと呼ばれましたよね)」

「金利を上げ始める」

「国債購入量を一段と減らして、バランスシートを縮小する」

という段取りを取りながら行っていくことを、FOMCのステートメントを読み解けば、理解する事ができるのです。

 

だから、日本の出口政策のシナリオを考えるのであれば、上記の3つの要素を「順列」の考え方に沿って、組み合わせてみればいいのです。

これ、小学生の算数の話ね(笑)

 

上記の3つの要素を同時に開始する、まず1通り、

3つを順々に開始する=量質金、量金質、質量金、質金量、金量質、金質量の6通り、

2要素と1要素の組み合わせ=(量質)金、金(量質)、(量金)質、質(量金)、量(質金)、(質金)量の6通り、

これだけでも13通りになります。

 

さて、現状を押えておきましょう!

公には余り知られていませんが、債券ディーラーなどからは、日銀は既に国債購入量を減らし始めていることを聞きます。

以前は年間80兆円の残高増加ペースでの国債購入でしたが、今は50兆円ほどでという話です。

FRBで言うTところのTaperingの段階ですね。

 

これは、国債発行残高に占める日銀の保有比率が高くなり過ぎ、かつてのペースで買い進めることが難しくなったことや、買い入れる量にこだわると、10年物金利のコントロールがかえって難しくなるためです。

 

ではその次は何か。

僕の考えはでは、より「異例なものから取り止める」ことが自然と考えます。

そう、次のステップは「マイナス金利政策」や、「10年物金利コントロールの取り止め(結果として、イールドカーブ・コントロール無しの単純なゼロ金利政策に回帰)」と、質の面での出口の模索ではないかと思います。

 

まず分かりやすい「質」の出口については、「ETFやJ-REATの買い入れ額を減らし、そして、新規買い入れを止める」フェーズと、「購入済みのETFやJ-REATの保有残高を減らす、すなわち売却する」フェーズに分かれるはずです。

ETFやJ-REATについては、既に「株式市場の機能を損なっている」「コーポレートガバナンスが効かなくなる」などの批判が起きており、出口政策決定とともに、購入額減少段階を経ず、すぐに買い入れを止める可能性も小さくないと思います。

 

ただ、その後の売却には勇気が必要です!

 

政治をはじめ、ファイナンス的にバカなマスコミも、みーんな株価に敏感ですから(笑)

恐らく、10年ぐらいをかけて、毎月少しずつ、一定のペースで静かに売っていくことが考えられます。

ね、この前提を考えたら、これからの東証がどうなるのか、自ずとわかりますよねー

 

次に「量」についてです。

これにつては、FRBが既に実例を示してくれています。

Taperingのあと、タイミングをみて保有国債残高を減らす(日銀のバランスシート規模が減る)フェーズに入ることになります。

ただ、保有国債残高を減らすフェーズの開始のタイミングは、米国同様、本格利上げ開始(マイナス金利をゼロ金利に戻した後の、次の利上げ)の後となる可能性と、

そして、日銀のバランスシートに残る事による財務問題を気にして、先にある程度バランスシートを減らしてから、本格利上げに入るタイミングという、2つの可能性があり得ると考えます。

 

なお、日銀が保有国債を売却することは、一切、考えられません!

 

FRB同様、保有国債が償還されるけれど、新規の購入を行わないことにより、時間をかけて(日本の場合7、8年はかかると思いますが)バランスシートを縮小することになると思います。

債券というものの性質を考えれば、自ずとご理解頂けるかと思います。ETFやJ-REATとは、意味合いが違うのです。

 

で、意外に読みにくいのが金利です。

出口政策の開始とともに「マイナス金利政策」と「イールドカーブのコントロールを取り止め」ることによって、普通のゼロ金利に戻ると考えますが、その後の利上げペースや、その仕方については、意見が分かれると思います。

この点は「日銀の財務がどうなるか」との論点とも絡みますので、あとでまとめて書きますね。

 

2、出口はいつか

 

このタイミングについて、僕個人は「黒田総裁が交代する」か「2%物価上昇目標が達成される」かすれば出口に入るが、そうでなければ出口政策は始まらない(既に始まったTaperingを除き)と考えています。

逆に言えば、「黒田総裁の下、2%目標が実現しない段階では、出口は始まらない」と考えています!

 

黒田総裁の任期は来年4月ですよね。

再任の確率は、その時点で安倍総理の政治基盤がどうかによって、大きく左右されると思いますが、まあ5割は再任かなと。

逆に残りのの5割は、本田駐スイス大使、伊藤隆敏コロンビア大学教授、岩田一政日本経済研究センター理事長、森金融庁長官、渡辺博史元財務官・元国際協力銀行総裁、中曽副総裁・雨宮理事(いずれも日銀プロパー)といった、名前が出ている人たちのうちの、誰かなのではないでしょうか。

 

それと、2%については、最近「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」という本が経済学書としては異例のベストセラーになっています。

様々な著者の論文を並べたもので、単一の結論はありませんが、非正規雇用増加や、賃金の上方硬直性(賃金は、余り下がらない一方、上がりもしないものだとう概念)などが、主な背景と捉えられているようです。

この本と同じように、僕的には、1%程度の物価上昇の実現は十分可能だけど、2%はきついと思っています。

 

かなり前の話になりますが、速水日銀総裁のころ、政策の失敗を各界から責められた日銀が、「1%程度の物価上昇を目指すべき」との見解をまとめたことがあります。

その前はというと「物価上昇率ゼロ%が良いのだ」との考え方が日銀内では支配的だったと言われてまして、その時には画期的な政策の転換だった訳です。
逆に言えば、「よくよく考えてみたが、1%上昇が日本経済の実力であり、限界である」ということなんじゃないのかなって思います。

 

その日銀が、なぜ今2%を目指しているかと言えば、欧米の中央銀行が2%を目指しているからです(笑)

だって、そうなんだもん!

 

欧米が2%を目指す中、それより低い物価上昇率(例えば1%)を目指す政策をとるとした場合、為替が過度の円高化をするリスクがありますから、それを避けるため2%目標が必要と、実は日銀関係者が説明しているんですね。

別の言い方をすれば、日本経済の実力や、日本の家計や、企業の物価感を反映したものでは「ない」という事です。

実際に、その2%を目指す欧米でも、2%になかなか届かず、苦戦しているのが実状です。

 

ちなみに、日銀の原田審議委員(最近、ナチスドイツの政策を支持したと批判された人です)が、6月1日に行った講演資料の図8最後のページに、日本のこれまでの失業率と物価上昇率の関係をプロットしたグラフ(ゆうなれば、フィリップス曲線のグラフ)が掲載されています。

でね、僕がこれを見た感想というのが、日本の場合は、物価上昇率1%程度が、最も落ち着きの良い水準であるようにみえてしまうのですが、どう思います?

2%ってどうでしょうか?1%前後の方が、日本経済の実態ではないかと思いますが、、、

と、話はちょっとずれましたが、本題に戻ります。

 

3、 出口でどうなるか

さて、上記のように出口はすぐに来ないかもしれませんが、まあ、世の中何が起こるか分かりません。

出口が始まると、何が起こるのでしょうか?

あるいは、出口に入らず、今の異例の金融政策が続くと、何が起きるのでしょうか?

今まで書いてきた前提を元に、シナリオを具体的に考えてみます。

 

シナリオは、

1、日銀の思惑通り出口の環境が整い、円滑に正常化していく(シナリオ①)、

2、出口に到達せず今の金融政策が続くが、とくに何も問題は起きない(シナリオ②)、

3、出口に到達せず今の政策が続く中で、日本の信認低下など、ひどい事態になる(シナリオ③)、

4、出口に辿り着くが、その後物事は円滑に進まない(シナリオ④)、

の4つです。

 

シナリオ①

まず、シナリオ①ですが、出口に到達した後の展開としては、実はこれがオーソドックスな見方かもしれません。

歴史上、何度も、金融緩和局面から、引き締め局面に移行したことがありました。

 

その都度「金利を上げて大丈夫か」との疑問が出ましたが、引き締めは実行されました。

「引き締めが必要な局面であれば、経済主体は高い金利に耐えられるはずだし、そうした局面で引き締めを躊躇うと、景気が過熱し過ぎ、その反動がひどくなる」ということで、経済状況に見合った金利水準とすることが自然であり、問題ないとの考え方です。

 

今回の難しさは、今の政策が、量質金利と3つの要素を持っているので、「今までと違う何かが起きるのではないか?」と心配になってしまうことです。

 

ただ、金利については、過去何度も、利上げが行われました。

量については、今まで日銀が実質的に引き受けてくれた国債を、再び民間金融機関が保有せざるを得なくなります。

さらに間が悪いことに、銀行には2018年以降新たな金利リスク規制が導入される(強化されるとの言い方が正確かもしれません)ので、国債保有が銀行に嫌われる結果、国債価格が下がり、金利が上がりやすくなります。

 

そうなると、円相場も円高に進みやすくなります。

また、質に関し、日銀がETFやJ-REATの購入を止め、さらに売り始めると、株価や地価が下がりやすくなります。

 

このように、出口は間違いなく金利、為替、株価、地価に影響を及ぼします。

しかし「経済が良くなっていれば耐えられる」というのが、このシナリオ①の見解です。

 

シナリオ②と③

シナリオ②と③は、裏腹の見方です。

黒田総裁が緩和政策を始めた頃、少なからずの人たち、中でも日銀OBの人々が、シナリオ③を主張し、政策を攻撃しました。

しかし、少なくとも現在までシナリオ③は現実化していません。

 

別な言い方をすると、「日本経済の実力が低下しているという長期停滞論的な立場に」立つと、今くらいの政策がちょうど日本経済の実力に見合っており、問題も無いのだと、シナリオ②を擁護することもできます。

先々10年、20年単位でも、シナリオ②が正しいとまでは思いませんが、少なくとも当面は、シナリオ③の心配は不要と思います。

また、確率としては、4つのシナリオの中で、このシナリオ②が最も高いようにも思います。

 

シナリオ④

さて、シナリオ④が最も難問で、一番の関心事かと思います。

 

そして、シナリオ④には、3つのパターンがあると思っています。

第1はシナリオ①の逆で、出口政策は始まるが、金利上昇、円高、株価下落など出口の影響が予想を上回り、経済が再び沈没していく可能性で、ないとは言えないと思います。

 

第2は、内輪な心配で黒田批判を行う、日銀OBの人たちが良く行う議論です。

簡単に言えば、出口における金利上昇過程で、日銀の財務が毀損する(大きな赤字が出て、債務超過に陥ってしまう等)結果、日銀の信認が失われ、それを契機に円相場や国債の暴落が起きるとの心配です。

この心配を正確に、かつ分かりやすく説明することは容易でないのですが、結論だけ言えば、僕は心配していません。

だって、ものすごくテクニカルな話なので、日銀の信任が毀損までいかないと思っているし、多分、簡単に伝えられる内容じゃないから、マスコミも報道しないと思うからです(笑)

 

で、第3のパターンを、最後に説明します。

ここで、再度、原田審議委員講演の図表を見てください。

この図8をみると、失業率低下に伴い徐々に物価上昇率が高まる関係が見て取れますが、失業率が3%を切ると、確かに物価上昇率は2%を上回りますが、そこで安定することなく急激に上昇し、7%程度にまで行きつきます。

 

原田委員は現在の日銀の政策を正当化するためにこのグラフを用いていますが、僕には、確かに政策が上手くいくと2%物価上昇目標を達成することは出来るが、「安定的に2%を実現する」ことは極めて難しいことを示したグラフにしか見えません!

 

すなわち、シナリオ④の第3パターンは、政策が効き過ぎてしまい、その結果、経済が突如不安定化するリスクの現実化です。

仮にそうなると、急激な引き締めを行う必要に迫られ、市場や経済は混乱に陥り、再び安定を取り戻すまで時間を要してしまうかもしれません。

ここまで政策が効くことをさほど予想してはいませんが、多少気に留めておく必要はあるかもしれません。

 

さて、ここまで書き出してみるとわかりますが、これだけの政策を動かすということには、こんなにも変数があることに気づきますよね。

だから、何らかの政策変更がある時に、その一点だけを理解して判断するほうが、間違うことが多いのです。

とはいえ、すでにTaperingが始まってるわけですから、上記のシナリオのどの時点にあるのかを考えることで、取るべきポジションは、多少なりとも、わかりやすくなったのではないかと思います。

 

過去の流れの中から、政策というのは連続性があるので、いくらでも対処はできるし、今、流れのどこにいるのか、今後、どんな選択肢があるのか、シナリオという形で考えると、ちょっとだけ、リスク(不確実性)との付き合いが楽になります。

どうも最近、僕自身の話が続いてましたからね、たまには、こうゆう内容のブログもいいんじゃね!と思い書きました。

それにしても、これ、長文すぎますよね(汗)

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木﨑 利長

木﨑 利長

ざっきー
1968年名古屋市生まれ。金融機関に勤務。クライアントの事業価値を向上させる事を目的とし、仕事を通して取り組んでいます。
化学メーカーの住宅部門に約9年。1999年2月生命保険会社に、ライフプランナーとして参画。
具体的には、上場企業を含む約80社の親密取引先のご縁を中心に、生命保険契約をお預かりしており、財務や資金繰りといった経営課題ついての改善や、売上を伸ばすための営業研修など、お客様の事業価値を向上させるための具体的なソリューションを提供し、経営者の弱音をも受け止められる担当者を目指し日々精進中です。
 (※このブログでの意見は全て個人の意見であり所属する団体の意見を代表するものではありません。)

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