経営者専門の保険屋さん、ざっきーです。今週は、俗にいう、従業員を対象とする福利厚生と定年退職金の原資形成を目的とする生命保険契約(福利厚生プラン、ちゅうやつです)の手続きをするために、ある企業さんの従業員さんに、ひとりづつ面接を行っていまして、結構、体力が要りまして(笑)へとへとさんです。
実務上の手続きとしては、面談を省略するなど、簡易な方法はあるんですが、従業員さんの立場から見た場合に、会社が説明する福利厚生や、退職金制度というのは、どうしても色眼鏡で見ているところがありまして、ひとりひとりに、会社とは関係のない、金融機関の担当者が、簡単ではあっても、社会保障制度や、その企業独自の福利厚生や、退職金制度についてなどをお話しますと、意外と伝わるし、めっちゃ反応がいいのです。
人はどんな場合だって、誰かから承認されたいという、承認欲求をもっています。給与や、賞与、退職金もこれにあたり、とても興味があることなのですが、なかなか会社内では話ができないし、仲間同士でもできないのが実状ですよね。
特に中小企業にお勤めの従業員さんの場合は、今、自分が受け取っている報酬水準はどうなのか、他の会社はどうなのかわからないとはいっても、情報の正確性は別として、風評での疑義が生じたり、モチベーションに繋がらなかったりと、経営者の皆さんにとってはいろんな意味で、悩み深いところではないでしょうか?
退職金という側面をとっても同じことで、経営者の皆さんのお考えが、従業員さんに浸透していることは少なく、齟齬が生じたりしていて、せっかくの経営判断による退職金制度自身が、役に立っていない場合もあります。
そんな状況を、実際に目の当たりにしてきましたから、最近の僕のスタンスとしては、実務的には大変でも、金融機関担当者が、手続きの時間を使って、従業員さんひとりひとりに、会社からのメッセージや、客観的な情報を提供することこそ、大事な付加価値なんだと思うようになりました。そうすれば、結果、その企業の経営者の方への貢献になりますしね。
例えば、手続きの面談をしながら、こんな話をしています。
「中小企業では、退職金の制度すらないところがあります。
また、制度はあっても具体的な積立は出来ていないところもございます。
御社は制度もございますし、この度の手続きは、従業員の皆さま個別に、
積立を開始するという意味でございます。
どうぞ、長く会社にお勤めいただき貢献頂ければ、ご退職時には支払われる
退職金という制度と積立が開始されますので、
頭の片隅にでも、ご記憶くださいませ」
こんな感じです。この話をするだけで、どうやら従業員さんへの退職金制度も含めた福利厚制度の浸透率が違うんですって。
確かに、僕のクライアントである医療法人では、僕がほとんど、その医療法人の退職金制度の設計から運用、手続きまでの全てを担当しておりまして、それ以降は、退職金制度の対象となった、勤続年数2年以降の方の離職率が減ったそうで、本当に本業以外でもクライアントさんには貢献できるんだなぁ、という実証にもなりました。
なんで、こんな話をしているのかと言いますと、過去の僕自身は、手続きの効率化、スピード化、簡略化こそがサービスだ!付加価値だ!と思っておりましたが、実は、本質を考えていくと「手間をワザと掛ける」必要が、いっぱいある事に気付いたんです。
僕が知っているだけで、できていないことや、伝わっていないことがあったとしても、工夫さえすれば、単なる手続きにも、付加価値をつける事が出来ますし、年数を重ねれば重ねるほどおろそかになりがちな、基本的な手順の再確認と、見直し、っていうのは、大事なことなんじゃないかな?って気づいた訳です。
僕は、「よいしょ」も「ナイスショット」も「社長!さすがっすね」という感じの価値提供(笑)はできませんが、もしかしかたら、少しでもお役に立てそうな、当たり前かもしれないけど、よくよく聞いてみると「えっ、そうゆうことなの?」という内容を、じわじわ発信していければいいなと思います。
さて、長くなりましたが(すみません…)表題の短期借入金と、長期借入金のお話をしたいと思います。
会計的には「ワンイヤールール」がありますので、一年以内に返済が完了するものが短期借入金、一年以上の返済期間があるものを長期借入金と言います。こんなことは知っとるわい、でしょうが(笑)こんなことが言いたいわけではございません。
まずは、貸付金のメインである、銀行から見た場合の短期借入金と、長期借入金の意味合いについてお話をさせてください。
金融機関というのは、銀行であれ、証券会社であれ、保険会社であれ「お金」という共通の商品を提供している訳でございます。特に銀行というのは、貸付金という独占的商品がありますけれども、よく考えると、借入金(銀行から見ると貸付金ですが、まあ、借入金で統一しますね)てのは、凄く単純化して考えますと、3つの要素しかございません。
1)融資額
2)融資金利
3)融資期間
この要素でございます。具体的商品は「お金」ですから、金融商品として差別性を出せるのは、この要素ぐらいなんですね。
そして、銀行の融資というのは、前にも書いたかもしれませんが、目的によっては、貸し出すことができません。単純な利得のために融資をする訳にはいかず、使用目的が大事と言われています。それは、大きく分けると、2つに大別されます。
1)運転資金
2)設備投資資金
ざっくり、この2つでございます。
銀行の目的は信用創造ですから、1)の運転資金については、信用取引の多い日本での商業活動の場合、受取手形の割引や、入金までの資金ギャップを埋めるための約束手形貸付などは、利用されているんじゃないでしょうか?
そう、短期と言えば、3か月とか、6カ月の決済資金が足らない場合に貸付金とされ、その返済期限の際に、返済して終わり、という形が本来の形となります。
でもね、資金ギャップのために借りたんだから、返しちゃおうってすうると「ちょっとまってください。とりあえず、金利も低いので借りておいてくださいよ~」って話が、銀行さんから来ませんでしょうか(笑)
だって、現在の銀行経営の環境というのは、融資を行うにしても、銀行格付けがちゃんとしていないと貸せないから、格付けの低い企業には貸したくないし、かといって、格付けの高い企業はお金が余っているか、資金需要がありませんから、なかなかしんどいですよね。
しかも、銀行の利益である貸付金の金利も、低金利のために、わずかですから、返済されちゃっても困るんですよね。
まあ、そうなると、本来は一年以内の短期貸付金なので、次の会計年度ででは、消えているはずなんですが、なぜが残ったまま、という状態になります。
また、銀行も、どうしても返されないほうがいい場合には「約定の書き換えと約束手形の交換(ロールオーバー)」なんて感じの取扱いを行なって、会社の口座からはキャッシュそのものが消えずに、そのまま預金口座に残っている状態にすることもできますから、ますます、借りている感じがなくなります、、、
ねえ、これ、どう思いますか?
とはいえ、運転資金を目的とする融資というのは、信用創造を行う銀行にとっては、目的として叶った融資であることは、お判りいただけるかと思います。
次に、2)設備投資資金ですが、これはわかりやすいですよね。創業時を考えてみてください。銀行に運転資金を貸してくれ!って言っても、実績がありませんので、貸してくれる訳がありませんよね。そう、そもそも運転されてませんからね(笑)
実は、創業時の資金というのは、設備投資資金という目的の融資なんです。だから、飲食業や、美理容室などの店舗設備がある事業には、融資されやすいのですが、コンサルタントとか、いきなり工場設備規模の製造業、とかってなるとかなり調達が難しくなります(まあ、できませんね)。そもそも信用がありませんから(笑)
日本の場合は、政策金融公庫などの政府系の融資制度を活用して、保証協会や、地方公共団体の信用の補完で、融資を受けることかできるかどうかの、ようやく入り口に立つことができます。信用ってのは、実績のないところには存在しないので(笑)
これは、文句を言う話でなはなく、だからスタートは自分自身が出す返済する必要のない資本が必要なのです。それも出さないで、借りるっていうのは、そもそもおかしな事であるんです。
さて、ここでポイントなのですが、融資を行う銀行の視点は、設備投資されたモノそのものの価値や、その装置などが生み出す将来の売上でもなく、貸し出された金額の保全でございます。
これを、どれぐらいの期間で回収するのかが、もっとも重要な融資のポイントになります。貸出期間というのは、銀行から見た場合は、融資の回収期間だからです。
また、会計上で考えると、設備投資資金なのだから、減価償却期間とイコールにすれば、資金繰りにも影響をしませんから、最も合理的な長期借入金の設定となります。
例えば、車とかは、新車で買えば法定減価償却期間は6年ですから、購入金額で融資を受け、返済期間を6年にすると、キャッシュフローもマッチしますから、これが目安となる訳です。
その企業が利益が豊かに出ていたとしたら、借入金の金利というのは、経費ですから、税効果もありますしね。資金繰りも損ねないので、合理的であると言える訳です。
でも、建物や、建造物、設備や装置などの償却期間が30年とか、物によっては50年とか言った場合、そんな長期間の融資はありませんし(笑)工場や、お店を建てる場合などに必要な土地なんてものは、そもそも減価償却がありませんよね。
だから、大きな設備投資をするためには、自己資本が必要な訳です。自己資本率の拡充というのは、無借金経営のためではなく、将来の設備投資のための余力だし、格付けも上がりますから、資金調達力も増すという効果があるからなのです。
本当にいい会社というのは、いつでも資金調達が出来る会社ですよね。
では、信用があるので、できるだけ長期がいいのか、というとこれも間違いです。わかりやすい例を申し上げますと、収益不動産を会社が持つと考えてください。年間の利回り10%ぐらいグロスであるとします。
これ、どう考えるのかっていうと、不動産なので、比較的長期の期間で借りれるかもしれませんが、事業として10%の利回りに投資したと考えると、短い方が良くないですかね?だって、投資資金が回収できなければ、本質的な利益は得られませんからね。
これ、間違っていらっしゃる方が多いので、書きますけど、住宅ローンの返済期間が35年とかっていうのは、収益物件じゃないからです。住宅ローンというのは、返済期間中は、実は、金融機関のものでして、ルックスルーして考えると住居費という費用を払っているのと同等です。だって、収益はありませんからね。
会社で借りるというのは、意味合い的には事業資金です。利益ベースで考えなければなりません。上記の例でいくと、グロス10%の利回りからは、支払金利や、様々な諸経費が控除される訳で、最終的な会社の利益に貢献できる金額というのは知れていることになります。
つまりは、早急に投資資金を回収して、利益を極大化せないと、利回りなんてものは確約されている訳ではないので、負担になってしまったら、借入金の返済すら滞る形となり、倒産まで行きつく可能性があります。
僕の周りだけでも、ここ10年で、数社の会社が、創業からなんとか成長して、本業の規模がそこそこになり、資金調達力が増したところで、収益不動産を借入金で購入すること勧められ、購入されました。
その後、リーマンショックや、311などの経済変化の中で、ある会社は収益率の悪化のために借入金の返済ができず倒産とか、そこまでいかなくとも、返済期間が長かったため、徐々に落ちてきた利回りのために、当初は良かったけど現在はかつかつ、という状況になってますが、この現状をどう思われますか?
僕は存じ上げないのです、億単位の借り入れをして収益不動産を購入して、投資も回収できて良かったよ〜ってところを(ああ、投資ファンドは別ですよ)
結論を申し上げますと、短期であれ、長期であれ、借入金の元本は、キャッシュフローでしか返済できないことに気づいていただきたいのです。
CF(キャッシュフロー)=営業利益+当期減価償却実施額
※)支払利息の大きな会社は営業利益ではなく経常利益で考えてください。
そう、ざっくり言えば、毎期産みだすんだと経営者の皆さんがコミットできる営業利益の範囲内に、借入金の当期元本返済分が収まっているのであれば、資金繰りに影響せずに返済ができ、かつ、返済期間が終了した時には、その借入金はゼロとなり、その設備投資資金から産み出される収益が、会社全体に貢献している状況になるはずなのです。
だからこそ、数多くの会社の資金繰りに関わってきて思うのは、借入金の押さえるべきポイントは、短期、長期に関わらず、金利だけではなく、返済しなくてはならない元本返済分と、キャッシュフローのバランス、つまりキャッシュフローマネジメントになると考えます。
特に、本来は設備投資資金のためにある長期貸付金で資金繰りがされている場合、このキャッシュフローマネジメントでコントロールしないと、借入金は減りませんし、増大し続けることになります。
それこそ、何か大きな経済環境の変化や、事業継承が突発的に発生すると立ち行かなくなる要因となりますので、リスク(不確実性)から経営者の皆さんを守る立場の保険屋は、必ず理解し、経営者の皆さんに伝えるべき情報なのです。
これができない保険屋ならば、経営者向けの保険提案をする資格はないと、今の僕は思います。自分の過去の反省も含めてね。
これは、経営者の皆さんしか、判断できない視点です。銀行は、格付けで導き出された、最も銀行にとって収益の上がる条件を提示しますので(これは商売として当たり前のこと)ここまでの資金繰りを見てはくれません。だから、キャッシュフローマネジメントという視点を知っておいて欲しいのです。
最後に、いろんな銀行マンと話しをしますが、その銀行マンならどうゆう会社に融資したいのかを聞いたことがあります。簡単に返ってきた答えは「銀行格付けの高い会社」だそうです。当たり前すぎますね(笑)そうは言っても、なかなか格付けの高い会社は借りてくれんでしょ?と言ったら、そうだと(笑)それでも、営業しなきゃいけないので、という枕言葉とともに、こう言いました。
「社長、お金借りませんか?」
という事を申し上げる会社は、銀行の側に貸す余地があり、より良い条件を引き出せるチャンスだと(笑)彼らは、本当にノルマも多いし、抱えている法人数も多いので、その都度、取引先の皆さまの会社に対して、要望しているものが違います。
でも、この言葉を言った時には、貸したいという意思表示なので、経営者の皆さんにとってチャンスなんだそうです(笑)こんな感じで答えるのがよろしいかと?
「ああそう、いくらぐらい? どんな条件?
まあ、いい条件を出してくれたら、考えない訳じゃないけど」
(笑)いかがでしょうか?
まあ、それ以外のところで、急に呼ばれて、運転資金目的としての融資の話で、金利下げろだの、資金足らんから貸せ、と言われたら、表面には絶対出さんけど「この会社、資金繰りやばいのかな?」だ、そうですよ。ちょっと言い方や、タイミングに気をつけてくださいね。
また、貸したくないところや、貸せないところには、そんな台詞は吐かないそうです。あと基本は、その会社の決算書を見ていることが前提なので、飛び込みで来た金融機関に、通用する話ではありませんので、その点はご注意を。
会社の究極の目的は継続することですから、そのためには日本でビジネスをする場合、間接金融である銀行との信頼関係は非常に大事です。だからこそ、いつでも銀行が融資したい会社であれば、継続するリスク(不確実性)は大きく下がることとなります。
そのためには銀行格付けを上げる工夫も大事ですし、また、資金繰りという観点では、銀行もさほど考慮しない元本返済とCFのバランスという視点を取り入れていただきますと、経営の安定度はかなり増すのではないかと実感しております。
この話、実際にご自身の会社をチェックされたいのであれば、ポイントをおしらせしますので、お声掛けください。真剣に経営に取り組まれていて、現状がご心配なら、すべてのチェックプロセスを開示し貢献できますからね。
木﨑 利長
化学メーカーの住宅部門に約9年。1999年2月生命保険会社に、ライフプランナーとして参画。
具体的には、上場企業を含む約80社の親密取引先のご縁を中心に、生命保険契約をお預かりしており、財務や資金繰りといった経営課題ついての改善や、売上を伸ばすための営業研修など、お客様の事業価値を向上させるための具体的なソリューションを提供し、経営者の弱音をも受け止められる担当者を目指し日々精進中です。
(※このブログでの意見は全て個人の意見であり所属する団体の意見を代表するものではありません。)
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