決算は黒字なのに、なぜ会社には、現金が残らないのか?

僕は、仕事を通じて経営者であるお客様の資金繰りを改善し、お金が残る経営にすることで、お客様をお金の悩みから解放させたいと思っています。

ですから以前から財務や資金調達の方法を学び、仕事で実践し、経営者のお客様に貢献しています。

 

その財務を学んでいる師匠から、以前こんな質問をされた事があります。

「経営者の仕事で、もっとも大事なことは何だと思う?」と。

 

僕の答えは

「継続する事」

「そのためには売上を上げる事」

「従って利益を産み出す事」

などといろいろ申し上げた訳ですが、、、

 

「まとめると、何だと思う」と問われ、口ごもったところに、

おっしゃられた言葉が忘れられません。

経営者の仕事とは、売上を上げる事でも、利益を上げる事でもなく、毎月、毎年、お金が残るように経営を変革しつづける事

だよと。

 

確かに、経営者にしかできない視点です。

そして、あまり理解されていないのかもしれません。

 

何故なら「何とか増収増益です」とおっしゃる経営者の方に、そうは言ってもご心配事などございますか?と聞くと、

多くの場合、こんな言葉を聞く機会が多いからです。

「決算上は黒字なのに、なぜか現金が足らず、資金繰りは厳しい、、、」

これ、本当によく聞くのですが、いかがでしょうか?

実例で、会計損益と現金損益の違いを確認する

では、なぜお金が残らないのでしょうか?

こんな経験はございませんか?

今期は売り上げも伸びて黒字決算だったのに、なぜか手元のキャッシュが足らない、

顧問税理士も、社長素晴らしいですね!って言われたけど、

実際はキャッシュがカツカツで資金繰りが苦しい、何でなんだろう?って、、

 

結論を申し上げれば、会計損益(決算書上の数字)と、現金損益(キャッシュフロー)には

「ズレ」があるからなのです。

 

例えば、財務諸表には、直接表示されない数字があります。

借入金の元本返済額です。

 

この点について、分かりやすい例題がありますから、ちょっと頭の体操をしてみましょう。

収益不動産の事例:

土地5億円、建物5億円(法定耐用年数50年)、表面利回り5%、

フルローン期間20年、年利1%、管理費1000万円/年

では、シンプルにこの事業だけについて考えてみましょう。

 

この事業だけの貸借対照表は、

資産の部10億円、

負債の部10億円、

純資産の部0円というのが、当初のB/Sですよね。

 

で、損益計算書はというと、

売上が5000万円、ここから管理費1000万円が引かれ、

さらに、減価償却費が定額法ならば1000万円/年なので、営業利益が3000万円、

そして、支払利息が1000万円なので、経常利益が2000万円、

最後にTAXが30%とすると、法人税等が600万円なので、当期純利益が1400万円となります。

 

当期純利益が1400万円もある事業ですから、これ、やってみようと思われませんか?

 

こんな感じの案件って、皆さんの周りでも多々ありませんか?

僕もかつての駆け出しの頃は、これいい物件なんじゃない!と思いましたし、、、

実際にこういった事業に、手を出された経営者の方もいらっしゃいました、、、

 

で、多くの方は次第に資金繰りに困り、損失覚悟で収益不動産を売却したり、、、

何人かの方々は、最後、自己破産をされました。。。

現金損益という「キャッシュフロー」で考えてみる

こういう事に、僕のお客様にはなって欲ししくないので、学び続けている訳ですが、

チェック方法としての「現金損益」という概念をお話し致します。

 

これは、僕の師匠であり、大先輩でもある五島聡さんが、事業における「現金」に注目し、

資金繰り改善や、資金調達の再編を行う際に用いている概念です。

 

ちなみに現金損益®って、聞きなれない方も多いとは思いますが、

キャッシュフロー計算書の簡易版と考えて頂くと分かりやすいと思います。

 

計算機はごくごくシンプルで、

当期純利益+当期減価償却実施額(キャッシュイン)

借入金の元本返済額+生命保険契約の資産計上分(キャッシュアウト)

これがマイナスの場合は「銭足らず」という事を確認することが出来ます。

 

では、この現金損益を用いて、先程の収益不動産のケースを考えてみましょう。

収益不動産の事例:

土地5億円、建物5億円(法定耐用年数50年)、表面利回り5%、

フルローン期間20年、年利1%、管理費1000万円/年

当期純利益は1400万円+当期減価償却実施額は1000万円なので、キャッシュインは2400万円

借入金額の元本返済額は5000万円なので、キャッシュアウトは5000万円、、、

という事は、毎年2600万円の現金が足らなくなります。

 

この事業を始めると、20年間確実に毎年2600万円足りなくなるのですが、、、

さて、この事業を運営できる自信はございますか?

僕は無理です、というかこれ、経営判断しちゃダメですよね、、、

他人資本経営と、自己資本経営の違いの本質

注目すべきポイントは2点あります

①フルローンですから、借入金額の元本返済があるという事と、

②土地というのは減価償却ができない、という点です。

 

なぜなら、この同じ収益不動産を、

フルローンではなく自己資本を使って資金調達したとしたら、どうなるでしょうか?

収益不動産の事例:

土地5億円、建物5億円(法定耐用年数50年)、表面利回り5%、

自己資本10億円、管理費1,000万円/年

 

この事業だけの貸借対照表は、

資産の部10億円、

負債の部0円、

純資産の部10億円というのが、当初のB/Sですよね。

 

で、損益計算書はというと、

売上が5000万円、ここから管理費1000万円が引かれて、

さらに、減価償却費が定額法なら年1000万円なので、営業利益が3000万円、

そして、支払利息はないので、経常利益が3000万円、

最後にTAXが30%とすると、法人税等が900万円なので、当期純利益が2100万円となります。

 

これを現金損益を計算すると、

当期純利益は2100万円+当期減価償却実施額は1000万円なので、

毎年3100万円のキャッシュインとなり、毎年3100万円の現金が余るんですよ!

これこそ、自己資本で経営をした時の凄さです。

内部留保をした資金を使う場合と、借入金での資金調達は、まったく別物なのです。

会計損益と現金損益を、チェックするという意識

では、資金の50%を間接金融という名の他人資本、

残り50%を自己資本だったらいかがでしょうか?

収益不動産の事例:

土地5億円、建物5億円(法定耐用年数50年)、表面利回り5%、

自己資本5億円、ローン5億円20年返済、金利1%、管理費1,000万円/年

 

この事業だけの貸借対照表は、

資産の部10億円、

負債の部5億円、

純資産の部5億円というのが、当初のB/Sですよね。

 

で、損益計算書はというと、

売上が5000万円、ここから管理費1000万円が引かれて、

さらに、減価償却費が定額法なら年1000万円なので、営業利益が3000万円、

そして、支払利息が500万円なので、経常利益が2500万円、

最後にTAXが30%とすると、法人税等が750万円なので、当期純利益が1750万円となります。

 

現金損益を計算すると、

当期純利益は1750万円+当期減価償却実施額は1000万円なので、

キャッシュインは2750万円

借入金額の元本返済額は2500万円なので、キャッシュアウトは2500万円

という事は、毎年250万円のキャッシュが残ります。

 

さて、このあたりになってくると、微妙な経営判断の問題にはなりませんか?

僕なら、シュミュレーションしたくなりますね。上振れ、下振れ、いろんな与条件を入れて、

感応度測定をしたくなります。

会計損益が黒字であっても、現金損益は違う

収益不動産の実例でザクッと試算してみましたが、

ポイントは、3パターン全て、会計損益は「黒字」という事です。

でも、現金損益は、まったくちがう事に気付かれましたよね!

 

実際の事業は、こんな単純化されていないから、というご意見もあろうかとは思いますが、

でもね、現実の経営に落とし込んでみると、当期純利益以上に元本返済していませんか?

設備投資で借入金をしたのに、法定耐用年数より短い期間で返済期間が設定されていませんか?

現金損益の要素は4つの数字ですが、深く考えてみれば思い当る事があるはずです。

 

当期純利益は税引き後利益ですよね、税金を支払わないで節税ばかりするとどうなりますか?

借入金の元本返済額は借入期間で変わりますが、なぜ3年、5年、7年返済という

返済期間のある証書貸付なのですか?

設備投資を借入金で行った場合、法定耐用年数でに借入期間をしないのですか?

そうすれば、減価償却費と借入金の元本返済額はバランスするのですが、、、

こういった事も、今後はちょっとづつ書いて行きますね。

 

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木﨑 利長

木﨑 利長

ざっきー
1968年名古屋市生まれ。金融機関に勤務。クライアントの事業価値を向上させる事を目的とし、仕事を通して取り組んでいます。
化学メーカーの住宅部門に約9年。1999年2月生命保険会社に、ライフプランナーとして参画。
具体的には、上場企業を含む約80社の親密取引先のご縁を中心に、生命保険契約をお預かりしており、財務や資金繰りといった経営課題ついての改善や、売上を伸ばすための営業研修など、お客様の事業価値を向上させるための具体的なソリューションを提供し、経営者の弱音をも受け止められる担当者を目指し日々精進中です。
 (※このブログでの意見は全て個人の意見であり所属する団体の意見を代表するものではありません。)

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