ご存知とは思いますが、日本の中央銀行、日銀による異次元の金融緩和政策、特にマイナス(ネガティブ)金利と称される政策によって、日本において最も信用のある日本国債の利回りは、既にマイナスになっております。
俗に、長期金利とは、10年もの日本国債の利回りを意味していますが、わかりますか?この意味。これの、本質的な意味って、なかなか聞きにくくありません?
実は、金融の世界でも、僕のいる生命保険業界の営業担当者なんて、ほとんど分かってないんじゃないかな(汗)?
だって、僕も以前は全然わからなかった、だって、文系だし、メーカー上がりだし、頓珍漢だからね(笑)
でも、ちょっとでもいいので、お金の仕組みを知っておくと、騙されることがなくなるから、経営者の皆さんには知っておいて欲しいのです。
実は、金融関係者のすべては、今おきていることを、本質的な理解をしていなかったり、ましてや、経営者の皆さんに接している営業担当者は知らない事が多いかと思います。
だから、僕自身は、自省を込めて伝えていきたいんです。
まあ、「そんなこと知らんでええ、人柄で選んでるから大丈夫」って事で、金融リテラシーなどない方が、販売しやすいもの事実で、これも困った事なんだけけど、それが現実であっても、少しだけでも、僕は、僕の大好きな人には、ちょっとだけでも知って欲しいから、伝えたいなと思うわけです。
だって、ちょっとでも今起きていることを知って頂いたら、今できる準備があるんだから。
まずは用語の説明からね
さて、まずは、用語の説明からです。
「短期金利」ってのは、銀行の銀行である日銀が、銀行に貸し出す金利である公定歩合がベースとなり、銀行間同士で、資金を融通しあう場合に、需要と供給によって決まる金利の事です。
まあ、今は、公定歩合がゼロなんだから、下げようがないんだけど、もし、公定歩合を日銀が上げたら、間違いなく上がりますよね。そう、中央銀行である日銀が、コントロールできる金利なんですね。
例えば、ある銀行が巨大な融資をすることになったとしましょうか、そしたら「お金」そのものが、銀行自身も必要になるわけで、これを他の銀行から融通するのね、その金利のことです。
それに金利をさらに上乗せして融資するんですよね。だから、借入金の金利はこれがもとで決まるし、変動金利ってやつは、これが常に変動しているから、半年ごとに見直しましょう!そうしないと、利ざやが稼げないからね。って話なわけですね。
まあ、今は、公定歩合もゼロだし、そんなに資金需要そのものがないから、ごくわずかな金利なわけですね。ここまで、大丈夫ですよね。
そして、金利はこれ以上の大幅な下げはないけど、大幅なアップはあり得る!というのが、今の現状です。
よろしいですかね。
でね、短期金利の対義語として「長期金利」ってのがあるんだけど、これは、ちょいと違ってまして、日本国債という、借金のカタに、10年後には金利というおまけを付けて返しますから、買ってくださいという一番信用度の高い(まあ、借り手は政府だから、どの企業よりも倒産しないよね、理論的にだけどw)債券、つまり借金のカタのことでございます。
その、日本国債の満期10年ものの、市場取引での価格の結果、計算される利回りのことなのね。
ちょっと、分かりにくいかな?
さっきも書いたけど、銀行ってのは、お金そのものが商品だから、貸し出すか、運用するかして、増やさないと、はっきり言って儲からないわけね。お金が商品だから、寝かしといてはいけない訳ですね。
だって、そうでしょ、在庫を眠らせておくなんてのは、事業としてあり得ないですよね。
例えば、一般の個人の方のように、普通預金口座に置いておいて、年利0.01%とかってなんてことしたら、銀行の経営者はクビ(笑)銀行って上場しているし、利益出さなきゃ、株主起こるからさ、そんな何もしないってのは、だめなんすよね。
だから、少しでも増やすために、貸出需要のない余剰資金を、日銀の当座預金口座へ置いておいたり(年利0.1%つくように、民主党政権の時に決めたんよ)して増やします。
その一つの手段が、日本国債を買うことなんだけど、具体的には、日本国債という形に、お金の形を変えておいて、その債券のクーポン(利息ね)を手に入れようとするわけです。
でもさ、さっきも書いたけど、急に融資することになったら、10年国債なんて、10年後まで待てないし、そもそも、国債ってしょっちゅう発行されているから、満期の時期は色々あるわけです。期間も短い3年、5年とかから、10年、20年、30年とか、色々あるんね。
だから、それらをいつでも、日本国債っていう債券から、現金に換えることのできる市場がいるんよ、それが、債券市場いうて、株式市場の100倍ぐらいの取引量のある市場で、買う人と、売る人がそれぞれに思惑があって、取引することで、ちょっとだけでも儲かる、あるいは、直ぐに現金化できると言う流動性を生み出してるのね。
なぜなら、それだけ急激に現金化したり、一瞬でも儲けられたりする市場があるので、経済活動にとって最も大切なお金の流れを止めないで、融通できるようにしていまして、市場ってのが必要なわけは「流動化」この一言に尽きるわけです。
そんな感じで、一般の人は、市場っていうと株式市場のことをイメージしますけど、プロばかりがいる債券市場ってのが規模も大きく、金融システム全体のベースになっているわけです。
その市場の中で、10年物の日本国債の利回りの事を、長期金利と言いますけど、この説明でも、わかりにくいっすよね。ごめーん。
でも頑張って書いてみるんで、お付き合いください!
マイナス金利の本当の意味
さて、日銀がマイナス(ネガティブ)金利を導入して以降、日本国債もマイナス金利で推移している訳ですが、こんな話があります。
たまに、飲んでいる席なんかですが、「ざっきー、意味がわかんねえよ、実感がなくて、実際には何が起きてんの?」って話があって、それぞれ皆さんの金融用語の理解度や、リテラシーが違うので、なかなか通じないんですよね。
まあ、確かに異常な事態なのでわかりにくいでしょうから、より具体的に、「マイナス金利」ってものについて、書いてみたいと思います。
(ここからの話は、債券の金利は実際は複利ですが、単純化してお伝えしたいので、単利でのまとめです。まあ、金利そのものが小さいので、実態とのずれは少ないので、ご容赦くださいね)
先週ついに、「10年ものの日本国債の金利がマイナス0.26%となった」という報道がありました。そして、昨日、20年ものの金利までもマイナスになりました、、、
さて、まずは、マイナス金利ということを、ルックスルーして考えると、「国債を買う=日本政府に金を貸す」というわけですから、その分、貸したほうは利息をもらわねばなりません。
しかし、お金を貸すとあら不思議、逆にお金を取られてしまうというルールが、マイナス金利という世界なわけですね。ただし、ちょっとしたトリックが隠されています。
実際の債券市場での日本国債などの債券は、1億円額面で取引するのですが、わかりやすいように、100万円でとして解説をしてみます。
10年もの日本国債の金利が、例えば、マイナス0.25%と言った場合、100万円国債を買うと毎年0.25%ずつ日本政府にお金を払ってくださいね、という話になりますよね。
そう、わかりやすく言えば、毎年、2,500円ずつ、100万円額面の債券購入に対して、日本政府にお金を払い続けることになります。
10年払えば、25,000円。毎年毎年、あるきまった期日に銀行に行って2,500円を払え!、ということになったとすると、間違いなく、こんなものを買うバカはいません。絶対にいないです。
ところが、今現在でもそれが流通しているということは、買う奴がいる訳です!それは、金利と価格のメカニズムによって、起きるのです。
つまり、先ほどの説明した毎年払いに来い!という代わりに、債券ではその分を「価格に反映させて、経済的には同じこと」を生み出しているからこそ、成り立つ世界である、ということなのです。
実務的に、利払いの日に、窓口に行って、現金を出して支払う、という話ではなく、そうゆうことを前提として、経済的に、便宜的に、合理的に、皆が考えているのが金融の世界なので、この辺りがわかりにくくしているのかもしれませんね。
このことを、具体的に説明しますと、例えば、100万円の国債を、単価100万円ではなく、10年分、本来なら払わねばならない利息を反映させて、102.5万円で買う事によって、「マイナス0.25%の国債の売買=年間2500円という利息を払う」ということを成立させるわけです。
ここまで、ついてこれていますか?
もちろん、10年持っていると、そもそも100万円投資したつもりのものを102.5万円で買っていますから、100万円に対して、当初に支払ったプレミアム分の25,000円は、絶対に損します!!!
つまり、経済的には同じことが起きるのですが、「10年後にしか実現しない!」という点が、最大のポイントです。そう、毎年ではなく、10年後に、一発で損失が生じる!ということです。
さて、そのことを、銀行などは、最後まで持っていると目減りすることは百も承知している訳ですよね。ところがなぜ、102.5%で買うというような、バカなことをやるかと言いますと、、、
10年経つまで、損失は表面化しないので、それまでの間に、それを103%、あるいは103.50%で、買うバカが出てくることが確実だからです!
な ぜ か、
それは債券市場に参加している銀行などは、国債のまま持っているわけにはいかず、現金、キャッシュにする必要があるからです、そう、何度も説明していますよね「流動性」って概念。経営者の皆さんは、この資産の流動性の大切さの意味を、分かって頂けますよね。
確かに、今は102.5%で買って10年持っていれば、明らかに損をするわけですが、途中で103%で売り抜けるなら、その利益は1年で5000円!つまり年間で0.5%の収益があげられるという訳ですね!!!
ただし、この話は、高値で買ってくれるバカが市場にいなければ、こんな価格が成立するわけがないのですが、、、日本の債券市場にはそのバカがいます。
はい、そのバカこそが、日銀という訳です。
ニュースで流れる、「金融緩和を約束して、更なる緩和を図る」という日銀の言葉を、ものすごくわかりやすく翻訳しますと、「金融政策上、何があっても日銀が買い取りますから大丈夫!」って言っていることと同義語です。
だから、102.5%で買って頂いても、必ず103%で買い取りますから、と、日銀が約束している、その前提だからこそ成り立つ取引なのです。合理的ではありませんが、そうゆうルールであれば、銀行が儲けることは可能です。よって、マイナス金利の取引が成立しているわけですね。
マイナス金利の問題の本質はここにあります
でも、これって、一方では、超、危険な空手形の発行をしているとも言えませんか?
例えば、日本の銀行は上場していますので、上場株式を購入して、株主になって、こんな株主代表訴訟をしてみるのです。
訴状の理由は、「なぜ、必ず損するはずの、マイナス金利の日本国債を買うのか?それは、利益相反ではないのか?」という訴訟です。
まあ、銀行は、こう答えるでしょう。
「いえいえ、日銀はゼロ金利政策をコミットしているので、102.5%で債券を買っても必ず103%で買いに来てくれるので損をすることはありませんよ」、と。
でも、裁判ですから、僕の代理人はこう言います、
「では、日銀が必ず買い取るという契約書を提示してください」これで、銀行はジエンド!
そんなもの、存在しませんから、勝てますよマジで(笑)
この頭の体操、金融庁の仕事もしている弁護士とも話しましたが、だよね、やばいよねーって(笑)
だって、経済合理的にはありえない商行為、つまり、明らかに損をする経営判断をして、その根拠は、日銀が言っているから、なんてのは株主代表訴訟では通用しませんから。
これ、経営者の皆さんも理解頂けますよね!
自らの事業価値を棄損することは、経営者はしませんし、もしそんなことをしたら、背任ですよね。未上場企業であっても、株主が別にいいたら、損害賠償請求を経営者個人にされますよね。
これ、ものすごいリスクだし、こんなことを、上場企業である銀行が、契約書すらないのに、日銀が今より高値で、絶対に買ってくれるのだ、という根拠のない、砂上の楼閣のような取引が、マイナス金利の実態であるということなんです。
そして、これは、株式市場の100倍はある、債券市場の参加者のみんなが、つまり、銀行を筆頭にした、日本中の金融機関が、この空手形を信じて、マイナス金利の取引を繰り返している、というのが現実なのです。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」そんな形式が、今、債券市場に広がっているのです。
これ、ちょっと、理解できる方はわかると思いますが、どうも、専門家領域すぎるのか、債券市場そのものの参加者は言いにくいのか(だって、こんなこと言うと、仕事そのものがなくなっちゃいますからね)よくわかりませんが、壮大な、忍法先送りの術!としか、僕には見えないんですけどね。。。
ちょっと、やな話ですけど、今、いろんな問題が取り上げられていますよね、Brexitとか、参議院選挙とか、あまり経済の失速そのもののことは、言われていませんが、このマイナス金利の影響で起きていることは、最終的には、経済の血液である資金の「流動化」に影響がでる可能性がある、ということです。
マイナス金利そのものは、長期金利に影響しますし、長期金利は、市場そのものが決めるものなので、政府も、日銀も、誰かがコントロールする術を持っていないところが問題です。
だって、この世の中ってのは、確実なことなんぞあまりなく、一つだけ言えることは、「こんなおかしな状態が、長く続くはずがない」ということです。
問題先送りは、その後、どうなったのか、何度もショックを受けてきたので、学習済みですよね。
さて、ここまでいかがだったでしょうか?
僕は、保険屋なので、リスク(不確実性)をヘッジするのが仕事です。
ずーっと、今までの経験で思い知ってきたことは、おかしいことは、将来必ずおかしいことが起きるし、問題を先送りすれば、先送りするほど、問題が表面化した時のリカバーは難しい、ということです。
まあ、何かのために、米ドルのキャッシュぐらい、手元にあってもいいかもしれないし、円でしか報酬を受けていないなら、せめてストックの一部は、円以外の通貨にするぐらいのヘッジがあってもいいかもしれませんね。
僕ですか?
ええ、持ってますよ。だって、今、円高だし(笑)キャッシュも、ストックもね!
木﨑 利長
化学メーカーの住宅部門に約9年。1999年2月生命保険会社に、ライフプランナーとして参画。
具体的には、上場企業を含む約80社の親密取引先のご縁を中心に、生命保険契約をお預かりしており、財務や資金繰りといった経営課題ついての改善や、売上を伸ばすための営業研修など、お客様の事業価値を向上させるための具体的なソリューションを提供し、経営者の弱音をも受け止められる担当者を目指し日々精進中です。
(※このブログでの意見は全て個人の意見であり所属する団体の意見を代表するものではありません。)
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